代理権の不消滅と登記手続き

2022年4月29日金曜日

代理権

登記申請を代理人に委任した場合の代理人の権限は、次の理由によっては消滅しません(不動産登記法17条)。

  • 本人の死亡
  • 本人である法人の合併による消滅
  • 本人である受託者の信託に関する任務に終了
  • 法定代理人の死亡またはその代理権の消滅もしくは変更

 

よくあるのが、代理人に登記申請の委任をした後に、本人が亡くなった場合や法人の代理者が交代した場合です。

 

 

代理人に登記申請の委任をした後に、本人が亡くなった場合

要旨

登記名義人が登記申請の委任をした後死亡した場合において、相続人がその委任を受けた代理人により当該委任に係る代理権限証書を添付して登記の申請をするとき、申請書には相続を証する書面のほか、登記名義人の印鑑証明書(作成後3か月以内のものに限る。)の添付を要する。

(平成060114日民三366(民三365))

 

 

上記の通り、登記名義人から登記申請の委任を受けた代理人は、委任を受けた後に登記名義人が亡くなった場合でも、登記申請をすることができます。

 

代理人が亡くなった登記名義人から委任を受けた際の委任状を添付した登記申請をする場合、相続人を申請情報の内容とし、かつ次の書面を添付しないといけません。

  • 相続証明書(戸籍謄本や法定相続情報一覧図)
  • 登記名義人の印鑑証明書(作成後3か月以内のものに限る)

 

 

亡くなってからでは印鑑証明書は発行できませんので、生前に印鑑証明書の交付を受けていなかったり、3か月の期間が経過してしまっている場合は、その代理人は登記申請することはできません。

 

 

代理人に登記申請の委任をした後に、法人の代表者が交代した場合

要旨

登記申請の委任をした法人代表者の代表権限が消滅した場合において、その委任を受けた代理人が当該委任状を添付して登記の申請をするとき、代表権限を証する書面には、当該代表者が代表権を有していたことを明らかにする当該法人の閉鎖登記簿謄本(作成後3か月を超えるものであっても差し支えない。)が含まれる。なお、上記のような書面を添付して申請をするときは、当該代表者の代表権限が消滅している旨を明らかにする必要がある。

(平成060114日民三366(民三365))

 

法定代理人の死亡またはその代理権の消滅もしくは変更では、代理人の代理権は消滅しません。

 

法定相続人には、法人の代表者も含まれます(平成5730日民三5320)。

 

なので、代理人が法人から登記申請の委任を受けた後に、委任した法人の代表者が交代した場合でも、代理人の代理権は消滅しません。

 

代理人が、法人の前代表者が作成した委任状を添付して登記の申請をする場合、次の要件を満たせば、登記申請は認められます。

  • 当該法人の閉鎖登記簿謄本(作成後3か月を超えるものであっても差し支えない。)を添付
  • 当該代表者の代表権限が消滅している旨を明らかにすること

 

 

法人の閉鎖登記簿謄本は、代表者が代表権を有していたことを明らかにするために必要になります。

 

この閉鎖登記簿謄本には作成後3か月以内であることを要しません。

 

これは過去の代表者の代理権減を証明するものだからです。

 

またこの場合、当該代表者の代表権限が消滅している旨を明らかにする必要がりますので、申請書にその旨を記載します。

 

記載方法については、こちらの記事にくわしく書いてあります。

 


 

というわけで今回は以上です。