二重登記の取扱いについての不動産登記先例をまとめました。
二重登記とは、同じ不動産に2つの登記記録が存在することです。
通常は、一筆の土地または一個の建物ごとに登記は記録されます(不動産登記法2条5号)。
しかし、すでに登記記録があるのに、誤って同じ不動産に二重に登記されることがまれにあります。
二重登記は権利関係について混乱を生ずるので、二重登記がされた場合は、どちらかの登記を削除する必要があります。どちらの登記を削除するかについての登記先例がいくつかありますので、解説します。
原則として、後にされた登記が登記官の職権で抹消される
二重登記がされた場合、原則として、後にされた登記が登記官の職権で抹消されます。
要旨
甲名義に建物の所有権の登記をした後、乙の建物の表示の登記及び所有権保存登記がされて重複登記となったものについては、後になされた乙の建物の表示の登記は重複登記を登記原因として職権抹消すべきである(昭和37年10月04日民事甲2820)。
所有者が同じで、後にされた登記に第三者の権利の登記がされている場合は、先の登記を抹消
登記名義人が同一人で、かつ、後にされた登記に抵当権などの第三者の権利の登記がされている場合は、便宜、先の登記を職権で抹消しても差し支えないとされています。
要旨
後の登記には所有権移転登記及び抵当権設定登記などがされており、先の登記には所有権保存登記のみがされて、登記名義人が同一人であるときは、便宜、先の登記を職権で抹消して差し支えない(昭和39年02月21日民事甲384)。
また、後にされた登記に第三者の権利の登記がされている場合に、先に登記された建物に対し、錯誤を原因として所有権登記の抹消登記申請があったときは、便宜受理してよいとされています(昭和30年04月22日民事甲698)。
まとめ
ということで、まとめると下記の通りです。
- 原則 後にされた登記が登記官の職権で抹消される
- 例外 所有者が同一で、後の登記に第三者の権利の登記がされている場合は、先にされた登記を申請または職権で抹消しても差し支えない
おわり