買戻し特約の仮登記は所有権の仮登記と同時申請しなくてよい

2022年4月21日木曜日

買戻権

 

買戻しの特約の登記は、当該不動産の所有権移転の登記が不動産登記法2条1号の仮登記の場合には、当該所有権移転仮登記に附記して、仮登記をもってすることができる。なお、買戻しの特約の本登記は、所有権移転の本登記と同時に申請することを要するが、その仮登記は、必ずしも所有権移転又はその請求権の仮登記と同時に申請することを要しない(昭和360530日民事甲1257)

 

 

不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金および契約の費用を返還して、売買の解除をすることができます(民法579条)。

この買戻す権利のことを買戻権といいます。

 

買戻しの特約の登記は、売買を原因とする所有権移転登記(または所有権保存登記)と同時に、別個の申請情報によって申請する必要があります(昭和35年3月31日民事甲712、昭和380829日民事甲2540)。

 

買戻しの特約は、売買契約と同時にする必要があるとされているからです。

 

なので、売買契約締結後にした買戻し特約にもとづく買戻し特約の登記をすることはできません(大判明治33年10月5日)。

 

所有権移転の登記後、買戻しの特約を追加する登記を申請することもできません(登記研究122号P33)。

 

一方、買戻し特約の仮登記は、必ずしも所有権移転の仮登記と同時に申請することを要しません。

 

しかし、この買戻し特約の仮登記に基づく本登記は、所有権移転の本登記と同時に申請する必要があります。

 

 

関連先例

代物弁済を原因とする買戻約款付所有権移転手続をする旨の調停に基づく所有権移転登記申請と同時になされた買戻特約の登記の申請は、不動産登記法49条2号の規定により却下すべきであるが、この買戻しの約定は所定の金員の支払を停止条件とする所有権返還の契約と解すべきであるから、その約定により停止条件付所有権移転の仮登記をすることができる(昭和370110日民事甲1)。

 

売買契約書に買戻代金及び契約費用が定められている場合の買戻しの登記について、登記原因証明情報として添付されている売買契約書に記載した金額と申請書記載の金額が異なる場合でも、当該買戻しの登記は却下されない(昭和350801日民事甲1934)。

 

買戻しの特約において利息を含めた売買代金は、登記できない(昭和350801日民事甲1934)。

 

数個の不動産を一括売買し、同時に買戻しの特約をした場合の登記申請については、不動産ごとに買戻代金及び契約費用を定めるべきであるが、不動産ごとに定めることが不可能な場合は一括して記載してよい(昭和350801日民事甲1934)。

→不動産ごとに定めることが不可能な場合とは、たとえば敷地権付き区分建物の専有部分と敷地利用権について一括して買戻し特約だされた場合などです。

 

売買代金を分割して支払う場合における買戻しの特約の登記申請書に表示すべき「売買代金」は、買主が現実に支払った金額及び総代金を記載すべきである(昭和350802日民事甲1971)。