信託による所有権移転の登記のされている不動産について、第三者の債務を担保するため、受託者を設定者とする抵当権設定の登記は、受理されない(昭和41年05月16日民事甲1179)。
信託とは、信頼できる人に財産の管理を任せる制度のことです。信じる人に財産を託すので、信託といいます。
信託には、委託者、受託者、受益者という当事者がいます。
委託者
財産の所有者
受託者
財産の管理を任される人
受益者
信託された財産の恩恵を受ける人
信託された財産は、受託者に管理を任されているだけで、受託者個人の財産ではないので、第三者の債務を担保するために抵当権を設定することはできません。
これは、委託者及び受益者の承諾がある場合でも同様です。
信託不動産に対する抵当権設定が受理された事例
しかし、信託不動産について絶対に抵当権設定ができないわけではありません。
次のような登記先例があります。
信託原簿記載の信託条項に「信託財産の運用及び処分方法は受託者において自由に実行し得るものとする」旨の信託の登記のある不動産について、「受託者は、受益者の債権者に対する債務全額を担保するため、受託者所有の不動産につき抵当権を設定することとし、直ちに債権者に対し右抵当権設定登記手続をする」旨の和解調書を添付して抵当権設定登記申請があった場合、これを受理して差し支えない(昭和44年08月16日民事甲1629)。
今回は以上です。