共同根抵当権についての登記先例まとめ

2022年4月25日月曜日

根抵当権

共同根抵当権についての登記先例をまとめました。

 

累積根抵当権は一つの申請書で申請することはできない

要旨

共同担保である旨の登記をしない数個の根抵当権設定の登記は、同一申請書で申請することはできない。

(昭和46104日民事甲3230)

 

累積根抵当権は一つの申請書で申請することはできません。

 

共同根抵当権には、純粋共同根抵当権と累積根抵当権があります。

純粋共同根抵当権とは、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨(共同担保である旨)の登記をした根抵当権のことをいいます(民法398条の16)。狭義の共同根抵当権です。

 

累積根抵当権とは、純粋共同根抵当権以外の根抵当権のことをいいます。つまり、共同担保である旨の登記をしない根抵当権です。

 

純粋共同根抵当権(共同担保である旨の登記をする根抵当権)は一つの申請書で申請することができます。

 

累積根抵当権(共同担保である旨の登記をしない根抵当権)は一つの申請書で申請することはできません。

 

累積根抵当権を純粋共同根抵当権に変更・更正することはできず、純粋共同根抵当権を累積根抵当権に変更・更正することもできません(登記研究407号P84)。

 


共同根抵当権の一部の不動産についての追加担保として根抵当権を設定できない

要旨

共同根抵当権の一部の不動産についての追加担保として根抵当権を設定することはできない。

共同担保でない根抵当権が設定されている複数の物件について、他の物件を追加担保とする根抵当権の設定登記はできない

(昭和46104日民事甲3230)

 

  

甲、乙不動産について既に共同担保として根抵当権の登記がされている場合(純粋共同根抵当権の場合)において、甲不動産または乙不動産いずれか一つの不動産のみについての追加担保として、丙不動産についての根抵当権の設定の登記は受理されません。

 

また、甲、乙不動産について根抵当権の設定登記がすでにされているものの、共同担保である旨の登記がされていない場合(累積根抵当権の場合)において、甲、乙両不動産についての追加担保としてされる丙物件についての根抵当権の設定登記の申請も受理されません。

 

もっとも、甲、乙不動産について共同担保でない根抵当権の設定登記がされている場合においては、甲不動産または乙不動産のいずれか一つの追加担保として丙不動産についての根抵当権の設定登記を申請することはできます(登記研究423号P123)。

 


共同根抵当権で、登記原因の日付が違っても一つの申請書ですることができる場合

要旨

共同根抵当権について、担保すべき債権の範囲、債務者もしくは極度額の変更または譲渡もしくは一部譲渡の登記は、各不動産について登記原因の日付が異なるときでも同一の申請書ですることができる。

(昭和46104日民事甲3230)

 

次の共同根抵当権の登記は、各不動産について登記原因の日付が違う場合でも一つの申請書で申請できます。

  • 担保すべき債権の範囲、債務者、極度額の変更登記
  • 根抵当権の全部譲渡または一部譲渡の登記

 

この場合は、登記原因及び日付について「後記のとおり」とし、不動産の表示欄に、不動産ごとの登記原因の日付を記載します(昭和39年3月7日民事甲588)。



根抵当権の元本が確定したとみなされた後は、共同根抵当権設定登記の申請は、受理されない

要旨

根抵当権の債務者について相続が開始し、6か月以内に民法398条の8第4項による合意の登記をしなかったため確定したとみなされる根抵当権に、確定後の追加設定契約による共同根抵当権設定登記の申請は、受理されない。

(平成195日民三3486)

 

根抵当権の元本確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、次の債務を担保します(民法398条の8第4項)。

  相続開始の時に存在する債務

  根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務

 

もし、相続開始後6カ月以内に、②の根抵当権者と根抵当権設定者との合意の登記をしないときは、根抵当権の元本は確定したものとみなされ、相続開始の時に存在する債務のみを担保します。

 

そして、根抵当権の元本が確定したものとみなされた後は、確定後の追加設定契約による共同根抵当権設定登記の申請は、受理されません。


根抵当権や債務者の変更登記を申請せずに、共同根抵当権の追加設定の登記を申請できない

要旨

登記された根抵当権について、根抵当権や債務者の表示の変更登記を申請せずに、変更後の根抵当権者・債務者の表示を申請情報の内容とする共同根抵当権の追加設定の登記を申請することができない(登記研究422号P104、登記研究325号P72、登記研究545号P154)。

共同根抵当権設定の仮登記はできない

要旨

(純粋)共同根抵当権設定の仮登記申請は、受理されない(昭和471125日民事甲4945)。

 

ただし、累積根抵当権の仮登記がそれぞれの不動産にされている場合に、仮登記にもとづく本登記において、共同根抵当権設定の登記を申請することができます(登記研究527号P173)。

 

おわり