要旨
内縁離婚をしたことにつき「被告は、原告に対し、○○の不動産につき年月日財産分与を原因とする所有権移転登記手続をせよ」との判決正本を添付して所有権移転登記を申請する場合には、その登記原因を「財産分与」とすることができる(昭和47年10月20日民事三発559)。
夫婦が離婚した際に、夫婦の一方に不動産を財産分与した場合の登記原因は「財産分与」になります。
夫婦でない内縁関係の解消の場合の登記原因が何になるのか疑義がありましたが、この登記先例は、登記原因は「財産分与」であると明らかにしました。
今回はこの不動産登記先例を解説します。
財産分与とは
財産分与とは、離婚する夫婦が夫婦共同の財産を分け合うことです。
夫婦が結婚生活の中で形成した財産については、たとえどちらかの名義であったとしても、夫婦共同の財産になります。
これは仮に、夫または妻が働いた給料で購入した財産であっても、もう片方が
家事などで家庭を支えていたからこそ財産を形成できたからです。
自宅など結婚中に取得した財産については、仮にどちらかの名義であっても、夫婦共同の所有になるので、離婚したときにはこの共同財産を清算する必要があります。
これが財産分与です。
内縁離婚の場合
以上のように、財産分与は結婚していた夫婦のためにある制度です。
しかし結婚していない内縁関係の場合にも、財産分与は認められます。
そこで、内縁離婚で、「被告は、原告に対し、○○の不動産につき年月日財産分与を原因とする所有権移転登記手続をせよ」との判決があった場合、登記原因が何になるのか問題になります。
この登記先例では、夫婦関係の場合と同じく登記原因は「財産分与」になることを明からにしました。
登記申請書の記載例は下記の通り。
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原 因 令和〇年〇月〇日財産分与
権 利 者 ○○市○○町○番地
B
義 務 者 ○○市○○町○番地
A
添付書類
登記原因証明情報 登記識別情報(登記済証)
印鑑証明書 住所証明書 代理権限証書
令和〇年〇月〇日申請 ○○法務局○○出張所
代 理 人 ○○市○○町○丁目○番地
司法書士 ○○ ○○ ㊞
連絡先電話番号 ○○○―○○○―○○○○
課税価格 金〇円
登録免許税 金〇円
不動産表示
(省略)
今回は以上です。ありがとうございました。